Research vol.11

文化観光高付加価値化リサーチチーム主催
「醸しだされる地域の文化をさぐる」
豊岡・鳥取在住者×きゅうかくうしお
対話の中から、地域における固有の文化に入り込んでいく上でのアーティストの視線が、どのように地元民と相互の関係を結べるか。

《きゅうかくうしお的醸す》プロジェクトの醸す人リサーチvol.11は、きゅうかくうしおの城崎国際アートセンター滞在初日に行われたリサーチワークショップの様子をお届けする特別編。但馬近郊在住の「醸す人」8名との対話から、きゅうかくうしおが見出した「醸す」とは。

2022.4.19 MON TEXT BY JUNKO YANO
PHOTO by Daichi Asakura
文化観光高付加価値化リサーチワークショップ
豊岡・鳥取在住者×きゅうかくうしお「醸しだされる地域の文化をさぐる」

2022年1月23日(日) 18:00~20:00
城崎国際アートセンター|兵庫県豊岡市城崎町湯島1062
参加者(きゅうかくうしお):石橋穂乃香、藤谷香子、松澤聡、村松薫、森山未來、矢野純子、吉枝康幸
参加者(豊岡・鳥取在住者):稲葉一明、茨木光男、花房靖裕、秀美、細間章司、森上三義、渡邉格、渡邉麻里子
参加者(文化観光リサーチチーム):齋藤貴弘、伊藤佳菜、丸岡直樹、鈴木綜真、和田夏実、岡田弘太郎
企画・コーディネート:酒井一途
主催:文化観光高付加価値化リサーチチーム

§1  細間章司(活魚料理屋) ×  藤谷香子(衣裳)

 

醸す人 細間章司
活魚料理おさらぎ2代目

私のやりたい料理は、ある意味「料理人」が目指す事です。お客様一人一人に向き合う事は難しい…経営し利益を上げ存続しなくてはならない。
でもやめられないのは、お客様の「美味しかったよ」「ありがとう」の為に追求しているのだと思います。
お客様の記憶に残る料理を作り続ける事が醸すことなのかもしれません。
細間章司
最近では店舗の2階を改装して自らバーを作ったという、料理人の域を超えた様々な活動を行っている細間さん。店を継ぐ前の料亭での修行中のお話や、2代目としての店舗運営の在り方などを聞かせてもらった。
話を聞いた人:藤谷香子(衣裳)
話を聞いた人:藤谷香子(衣裳)
§2  稲葉一明(変形菌研究者) ×  森山未來(踊り子)

醸す人 稲葉一明
変形菌(粘菌)研究者/豊岡市立コウノトリ文化館館長、NPO法人コウノトリ市民研究所理事

元兵庫県職員、農林系の業務に携わる。在野でキノコの研究から、変形菌(粘菌)の研究に入る。
変形菌(捕食者)はバクテリア・菌類(分解者)を食べることで分解のバランスを保ち、物質循環の一部を担っていると考えられている存在。

動植物と異なる「単細胞多核」である変形菌は、いまだによく分からないことが多いらしい。
後日他のメンバー達がコウノトリ文化館を訪問し、変形菌について詳しく話を伺うことができた。
話を聞いた人:森山未來(踊り子)
話を聞いた人:森山未來(踊り子)
§3  森上三義(わな猟師) ×  吉枝康幸(照明)

醸す人 森上三義
わな猟猟師/元鞄屋社長

会社経営時代は中国語を習得し現地での事業を自らさばくなど、知識欲と行動力、バランス感覚の鋭さと、今も常に新しいことに挑戦している姿が印象的な森上さん。
滞在期間中、きゅうかくうしおメンバーでわな猟に同行し、剥製や鹿の角を保管しているご自宅にも訪問させてもらい、さらに詳しい話を伺った。獲れた鹿の肉はメンバーで美味しくいただいた。
話を聞いた人:吉枝康幸(照明)
話を聞いた人:吉枝康幸(照明)
§4  花房靖裕(醤油屋) ×  矢野純子(宣伝美術)

醸す人 花房靖裕
しょうゆの花房 花房商店代表取締役社長

天保12年(1841年)「かうぢや(糀屋)」として、糀製造を始める。昭和2年(1927年)「マルハナ醤油」の商号で、四代目 花房與市郎が 醤油醸造を始める。現在の代表は7代目。国産丸大豆100%、国産小麦100%、天日塩を使用し、天然醸造で再仕込み醤油を作っている。
https://www.syouyuhanafusa.co.jp

「食卓の笑顔」を生み出す醤油や味噌づくりを行っている。醤油も味噌も、蔵元によって様々スタイルを持ち地域の好みに合った味を作り出していて「正解はない」ということが面白かった。制作会社勤務時代に、消費者視点や多様なクライアントの考え方に触れた経験も現在の経営に生かされているとのこと。醸すとはつくることでなく育てること、という言葉をいただいた。
滞在期間中に開催された手作り味噌教室にもメンバーで参加し、KIACにて豊岡産食材で味噌作りを行った。現在各メンバーの自宅で熟成中。
話を聞いた人:矢野純子(宣伝美術)
話を聞いた人:矢野純子(宣伝美術)
§5  渡邉格/渡邉麻里子(パン・ビール製造) ×  石橋穂乃香(ほのちゃん)

醸す人 渡邉格/渡邉麻里子
タルマーリーオーナーシェフ/女将(パン・ビール酵母菌)

自家製天然酵母、天然麹菌の自家採種、地産の小麦を自家製粉したパンや焼き菓子を製造。また野生の菌だけで発酵させるクラフトビール製造をしはじめる。鳥取県智頭町の元保育園を改装して拠点としている。
https://www.talmary.com

セッションの翌日、改めてメンバー全員との対話の時間をいただいた。
野生の菌を使うこと、腐るということ、人間の感情が菌にも連鎖すること、菌が生態系のバランスをとっているのでは、など多岐にわたる大変興味深い話が聞けた。「美味しいものを目指さない」という言葉も印象的だった。
話を聞いた人:石橋穂乃香(ほのちゃん)
話を聞いた人:石橋穂乃香(ほのちゃん)
§6  茨木光男(区長・元教師) ×  村松薫(制作)

醸す人 茨木光男
竹野町三原地区区長/元教師

山奥の竹野南地区に位置する集落では、埋め墓と参り墓の両墓制で、二十年くらい前までは土葬の仕組みが残っていた。数年前に土葬の際の祭礼具一式が見つかり、それらの道具で「死者のいない祭礼」を再現するイベントを行った。

廃校となった区内の小学校の活用プロジェクトとして、現在様々なイベントを企画実施している行動力のある区長さん。土葬時代の祭礼具の写真など貴重な資料も見せて頂き、当時の葬儀についての話を伺った。美しい装飾品やお墓まで練り歩く行為から、悲観だけではない温かな死生観を感じた。
話を聞いた人:村松薫(制作)
話を聞いた人:村松薫(制作)
§7  秀美(芸者) ×  松澤聡(映像)

醸す人 秀美
芸者

城崎温泉最後の芸者と呼ばれる。すでに現役は引退されているが、映画監督/俳優の太田信吾さんの企画で芸者の芸を引き継ぐための稽古をつけはじめた。

芸者として長年見てきた城崎の町の歴史や、芸者の仕事について伺った。
後日メンバーに踊りの稽古や芸者時代の話、城崎の町案内もしていただいた。
話を聞いた人:松澤聡(映像)
話を聞いた人:松澤聡(映像)
文化観光高付加価値化リサーチワークショップ
豊岡・鳥取在住者×きゅうかくうしお「醸しだされる地域の文化をさぐる」

2022年1月23日(日) 18:00~20:00
城崎国際アートセンター|兵庫県豊岡市城崎町湯島1062
参加者(きゅうかくうしお):石橋穂乃香、藤谷香子、松澤聡、村松薫、森山未來、矢野純子、吉枝康幸
参加者(豊岡・鳥取在住者):稲葉一明、茨木光男、花房靖裕、秀美、細間章司、森上三義、渡邉格、渡邉麻里子
参加者(文化観光リサーチチーム):齋藤貴弘、伊藤佳菜、丸岡直樹、鈴木綜真、和田夏実、岡田弘太郎
企画・コーディネート:酒井一途
主催:文化観光高付加価値化リサーチチーム
共催:豊岡市役所

企画&主催
酒井一途 / 文化観光高付加価値化リサーチチーム

▶︎ 文化観光高付加価値化リサーチチームのnote→https://note.com/session5
▶︎ 「令和3年度文化観光高付加価値化リサーチ 文化・観光・まちづくりの関係性について」レポート
▶︎ 森山未來(ダンサー / 俳優) – 地域を知るなかで立ち上がってくる身体、言葉をパフォーマンスに凝縮させる

Photo by 朝倉大地
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