Research vol.1

料理家 かみや いずみ
 
人間が予測できない複雑さを生み出す発酵食品は、料理に”時間”を足してくれる。

我々人間にとって、もっとも身近な「醸す」は発酵食品かもしれない。醤油、味噌、酒、、、日々の食事のどこかにいる、欠かせないもの。《きゅうかくうしお的醸す》プロジェクトの醸す人リサーチvol.1は、海外でも活動する料理家であり、ベジタリアン・ヴィーガン料理「monologue」の店主かみやいずみさん。「料理における発酵食品の存在」とは。

2021.10.23 SAT TEXT BY JUNKO YANO
料理人から見た発酵について、今日はお話を聞かせてください。いずみさんは、仕事で台湾や韓国など海外にも行っていますよね。海外の発酵文化、料理における発酵て、どんなですか?
映像
映像
松澤 聰
海外の発酵食品

ー 海外にも日本みたいな発酵食品はあって、例えば韓国のメジュ。市場に吊るして売っている、麹玉みたいなもの。

韓国は日本に似ていて味噌も醤油もある。白味噌や赤味噌みたいなのもあるけど、日本よりワイルドな味。日本の方が綺麗で繊細に作り分けられている。韓国日本それぞれの良さがあり、どちらも良い。

ー 日本にはに無い面白い発酵食品だと、台湾の毛カビ豆腐。カビごと調味料として使う。

その土地に息づく菌による発酵

ー 土地によって居る菌もそれぞれ。その土地のお酒と一緒にその菌がいる環境で食べるから、”土地のもの”は美味しいのでは。今まで食べられないような発酵食品に海外で会ったことは無く、どれも美味しい。

ー 海外で料理する場合も、食材は現地調達。その土地の人や土地の味を求めて来るお客様が食べるから、その土地の食材で新しい食べ方を提案している。現地入りしたら市場を回って、食べたり話したりして現地の人の食の嗜好をリサーチしてから料理を考える。

出汁と発酵調味料

ー 海外でも発酵食品は旨味を足す時に使っている。人間には予測できない複雑さがあり、料理に深みが出る。

ー 私は出汁はあまり使わない。味噌汁も味噌だけで十分旨味があるから、出汁を入れるのがもったいない。発酵食品を入れると深みが全然違う。なんでこれが美味しいのか分からないような深みが生まれる。

 

料理を考えるときのプロセス

ー まずはメインの野菜を置いて、それに合うソースを試行錯誤していく。「絶対に美味しい」が大前提。
自分で発酵食品つくる時は「これが欲しい」と狙ってつくる。
予想外の方向に発酵することはあるけど、それも面白い。予期しない発酵から料理が生まれることもあって、それが良い発酵かは分からないけど、だいたい美味しい。

発酵と腐敗をどう見分けるか

ー 香りと触感で判断する。触ってやばいと思ったら腐敗

ー 発酵食品は生き物として扱っていて、料理に使うと足も速い。一番美味しい旬の時にお客様に食べてもらえるように、提供する時間から逆算して仕込みをしている。

料理における発酵食品の役割

ー 料理に「時間」を加えてくれる。野菜はその日採れたもので、そこには時間による経験や深みがないけど、その「時間」を補いたいときに発酵食品を使う

日本の発酵食品の特徴

ー 日本の特徴は「麹屋(種麹屋)さんの存在」。海外には菌をつくるという発想や種麹屋さんが無い。日本の麹屋さんは種麹から使い分けていて、それを使った食材のできあがりも綺麗で繊細、間違いない仕上がりを人間がコントロールできる。

発酵か腐敗かを「触って判断する」という話に、料理が手仕事であり、手で美味しさを生み出す料理人ならではの感覚のあり方を感じた。日本には海外には無い種麹屋があり、発酵に使う菌の種類や管理も細やかであることには、日本の資源や環境、日本人の突き詰める職人気質が反映されているのだろうか。ここから3ヶ月の「時間」の中で、きゅうかくうしお的にどう醸されどう醸すのかを観察するとともに、次回は「麹屋」に話を聞きにいく。
宣伝美術
宣伝美術
矢野 純子

今回の醸す人 かみやいずみ(料理家)

ベジタリアン・ヴィーガン料理「monologue」店主。自然農法で育った食材、自家製の調味料を用いた野菜料理をつくっている。

https://www.instagram.com/izumi_kamiya/
https://www.instagram.com/monologue_official/

Back to きゅうかくうしお的醸すプロジェクトTOP